朝の田園都市線は、事故のためエライ混んでいた。聞くところによると、首都圏で二番目、と言う事は日本で二番目に混んでいる路線らしい。(ちなみに、聞くところによると、一番は東西線だった気がする。)
それが、朝、事故がありダイヤが大幅に乱れたため、予想以上に混むことになった。通常でも日本で二番目に混んでいる路線なので、ダイヤが乱れ、「普通だったら複数本に分かれて乗る人たち」がまとめてその電車に乗っている、乗ってくるのである。混んで当然と言えば当然だ。
満員電車、それも身動きが取れないぐらいの満員電車だと、ほぼ自分の意志で身動きすることはできない。ある一定の範囲では可能なのだが、例えば、停車時、あるいは、発車時にGがかかると、その満員に乗っている人達が前へ、あるいは後ろへ動くことになる。これは人間の塊、と言うよりも、それだけの重量が動くと言う事だから、一人の人が頑張ったところでいかようにも出来ない。
私が乗っていた隣に、年配の女性がいた。私も例にもれず、普通なら何とか立っていられる、という程度で途中から、進行方向前側に斜めになってしまった。こうなると踏ん張りも聞かないし、リカバリも効かせようがない。電車が加速すると進行方向後ろにGがかかるため元に戻れるのだが、再びブレーキがかかるともうダメだ。だから途中からは「それだけの重量」に押され、前の人と後ろの人に足を挟まれ捻じ曲げられ、しかしながらそんな状況では空気は異様に暑く、かなり厳しい状態であった。
その私の進行方向前側に年配の女性がいたのである。彼女もかなり斜めになってしまっており、ほぼ抵抗できない状態だが悲しいことにもっとも座席側に立っていたため、自分が他に体重を預けることもできず、手で踏ん張っている状態、あるいは状況によっては腰が海老ぞりになっているのかもしれない。
その更に向こう側にいた男性が彼女を気遣って「大丈夫ですか?」と聞くのだが、勿論「痛いです」とか答えている。答えたところでどうしようもないのだ。その男性も声をかけたものの、それから何かが出来るわけではない。健康そうな青年だったが、彼の体力を持ってしてもこの重量を押しのける事は出来ないのである。直接の加害者は誰か、と問われたらおそらく俺だろう。だが、俺だって被害者だ。
結局、それだけの集団が動こうとすると、「理屈では正しい事は別にあるが」それぞれがそれぞれのインセンティブの元、つまり、「自分さえよければ良い」と言う気持ちのままに動くことになる。それだって他者を押しのけてどうこう、と言う事ではなく、「自分は安全に、かつ、目的地につけるように」したいだけだ。たったそれだけのちっぽけなインセンティブに過ぎない。しかし、この状況で、この人数が、この狭い中でみんな同じことを考えるとそれが集団になった時に危険な状態になるのである。勿論、その中の一人が俺だ。
と言う事を朦朧とする意識の中で考えながら電車を降りた。勿論、降りる時も偉い大変だった。なぜなら降りたいやつと降りたくない奴が混在しているからだ。これだって、通常ドアの近くにいればみんなすんなり降りるだろう。しかし、これだけの人数がいると、ドアの近くにいない人たちもみんな降りる邪魔になるのである。
集団の力は怖い。と同時に、朝のラッシュも怖い。
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